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ベートーヴェン『弦楽四重奏曲第15番』

この記事の最終更新日:2006年10月9日


ベートーヴェン : 弦楽四重奏曲第15番&第16番
ベートーヴェン : 弦楽四重奏曲第15番&第16番アルバン・ベルク四重奏団 ベートーヴェン

東芝EMI 1997-05-21

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ベートーヴェンの楽曲の中では、弦楽四重奏の、この第15番が一番好きです。

ベートーヴェン最晩年の作品です。渋くてうまい。
彼の交響曲みたいな派手さはありません。

クラシックの中でも弦楽四重奏はマイナージャンルだけど、家の中で、ステレオで聴くには弦楽四重奏がベストかもと思います。交響曲とか協奏曲は、大きなホールで聴くためのもの。音のダイナミクス幅も大きく、都会のアパートで聴くには、隣人の迷惑を考えてしまいます。

対して、弦楽四重奏曲は、もともと貴族が、自分の部屋で聴くためのもの。ホームパーティーなどに弦楽四重奏団を呼んで、紅茶でも飲みながらリラックスして聴く感じ。都会のアパート暮らしに、弦楽四重奏の優しく繊細な響きがよくあいます。

短調の曲であるこの15番は、どこかもの悲しい響きでスタート。一番の聴き所は第三楽章です! 蛙が池を飛び回るような軽快かつ滑稽で楽しげな音作り。聞いていると「わびさび」とか、「秘すれば花なり」とか、老荘思想とか、禅の境地とか、幽玄とか、もののあはれを連想します。きわめて東洋的で、最晩年のマーラーチックな、変わり種のベートーヴェンです。

これを聴かずに生きているのは、実にもったいないと思える人類文化の成果です。


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